過去の赴任者がインド人に対して「あきらめた」功罪

2015-04-16
トピック: インド・オフショア開発

過去、何年も立ち上げに日本人がインドに赴任し、立ち上げを行ってきた。
その話を見聞きする機会が多分にあったわけだが、多くの赴任者の過去の評価はこうだった。

・インド人は「わからない。これでは作れない」と言ってやってくれない
・インド人は動かない
・インド人は使えないから、仕方なく自分で夜遅くまで頑張って仕事を終わらせた
・インド人に対する文句を日本人同士で言い合う。「インド人使えない」

複数人の赴任者の態度がこうであったが故に、インド人に間違ったメッセージを送った。

・日本人は、夜遅くまで 「文句も言わずに」 しっかり仕事をしてくれる

実際は日本人同士で文句を言い合っていたわけだが、インド人には言っていなかったようです。

それでいて、私が過去の赴任者が歴代に渡って言っている問題点をインド人に対して指摘すると、当のインド人は 「そんなことない。 そんなこと言うのお前だけだ」 などと、まるで私だけが特別なことを言っているかのように反発し、「お前は他の赴任者と違う。君のような働き方ではインドでは通用しない」 などと批判し出す有様。

おいおい、待てよ。 過去の赴任者がいろいろ指摘していたのは事実だし、インド人のことを私以上にぼろくそに言っていた過去の赴任者は、実は当のインド人と表面上はうまく仲良しでやっていたらしい。 それでいて、組織の立ち上げを任された過去の赴任者が、とても大事なフィードバックを当のインド人に対して行っていなかったのであれば給料泥棒だろう。

評価をインド人に対して正確に伝えることなく、日本人のお得意である、社交辞令で「 Good Job (よくやったね)」 とか、「Perfect (完璧だね)」みたいなことを過去の赴任者が無責任にも多発していたらしい。

赴任者だけならともかく、日本のマネージャも適当なもので、よく分っていないと日本語で公言しているのにもかかわらず、英語では「Very Good」とか言うから、ますますインド人が勘違いする。 「Very Good」とか本社のマネージャに言われたならば、全社メールで「こんな素晴らしいことがあったぞ」と言いふらすありさま。 社交辞令の発言だし、本気ではないのに。 これは、安易な発言をした日本人マネージャも悪いのだが。

そこで、私が駄目なところを指摘すると 「そんなことを言うのお前だけだ。俺たちは素晴らしくうまくやっている。○○さんも○○さんも褒めている」 などと、言葉を言葉通りに受け取ってしまっていて、聞く耳を持たない。

どうやら、日本人マネージャーも過去の赴任者も大してインドに対して期待しておらず、とりあえず自信付けて成功体験を積み重ねないとだめだな、みたいなことを思って褒めまくったことがあったらしい。その習慣が今もある程度続いているようだ。 とりあえず褒めておけ、みたいな。

それを真に受けて、「もう俺たちは完璧」だと勘違いをしてしまった。
もはや聞く耳を持たない。
元々自信満々なインド人が、褒められでもしたら更に自信満々で聞く耳を持たなくなるのも当然と言える。

とは言っても、プロジェクトを進めて私などと付き合うにつれ、「俺たちインド人は、思っていたより優秀じゃないようだ」 と気付いてくれたようなので、そこは多少改善したようだが。 気付いたとしてもそれを認めることのできない、頭が根本的に悪いインド人も多い一方で、現実を受け止める謙虚なインド人もいることは気にとめる必要がある。

それにしても、過去の赴任者はインド人組織の立ち上げを任されていたのにも関わらずインド人の勘違いを増長させたのでは、次に来る私のような人が苦労することになる。 原因はやはり、過去の赴任者がことごとく「インド人、あいつらほんと駄目だよ。使えない」と、「あきらめて」いたことにある。 だから、インド人に対する発言も適当になった。

如何にあきらめていたのかは、以下の言葉でよくわかる。
「インド人が辞める? インド人はすぐ辞めるよ。 気にするな。ほっとけ」
あまりインド人に期待せず、如何にあきらめて子供扱いしていたのかが、この発言でよくわかる。

いたずらに褒めれば勘違いが増長し、褒めなければ辞めたり仕事を放棄する。
確かに、場当たり的に褒めて仲良くやっていればその場は何とか過ごせるかもしれないが、きちんと1つ1つコツコツと見て指摘していかない限り、組織は良くならない。
過去の赴任者が指摘を辞めて褒めまくった結果が、今の組織だ。

その後、前に書いたように、インドをネタにして出世をもくろんだ日本人元社長/マネージャが赴任して、劇的に改善したということにして、見た目だけ繕って中身はぼろぼろ、という悪循環が生まれた。
コツコツと改善することを評価しない組織にも問題があるのかもしれない。

昔の赴任者は、「どうしてそんなに劇的に良くなったのだ?」と不思議がっていたが、何のことはない。 現実に目を瞑って良い評価を与えただけのことだ。 一向に良くならないから日本人から諦められて、やがては出世ネタのために「優秀」という偽りの評価を与えられて、実際の姿とはうらはらに自信だけが増長したのだが、実際はボロボロだった、ということだ。

悪いところを改善しようとすれば「そんなことはない」と否定して自分たちが優秀だと思い込むインド人には付ける薬がない。

根本を辿れば、改善を「あきらめて」しまった過去の赴任者にその責任がある。 そこでコツコツとやっていさえすれば、インドをネタにして出世をもくろむ日本人がやって来たとしても、ここまで事態は悪くならなかったように思える。

そもそも、インド人を社長にしたら暴走することは予想できた筈で、私が赴任前に日本のマネージャにも警告したことがある。 数年前に「インド人を社長にしたら暴走しますよ」 と言ったら、「いいじゃない。暴走させれば」 と、まるで他人事。 その背景としては、そもそもインド人がイマイチなので、お取りつぶしにする前に本人たちにできることを最後までさせてあげよう、という魂胆があったのではないかと推測する。 上記の背景のニュアンスも、「もう、あいつら使えないのだから、暴走でも何でもしてみた方が事態が好転するかもしれない」という、半ばあきらめの境地にあったように私には思えた。

更には、とあるマネージャにいろいろ訴えたら、「あまりくだらないことに体力使っても仕方がないぞ」と、まるで興味なくスルーされたことがある。 貴方のような権限のあるマネージャーが無関心でいたからこうして現在赴任しているメンバーが苦労しているということを訴えても状況を理解しない。 少しでも関心のあるマネージャなら状況を知ろうとするものだが、上の発言からも見て取れるように、そもそも興味がないらしい。 そうした無関心なマネージャーおよび過去の赴任者が、現在のインド子会社を育ててきたと言える。

周囲が諦めた結果、本人たちは完璧と勘違いをするようになった。  言い換えれば、インド子会社は子供扱いされていて、何をしても「素晴らしい」と周囲が褒めてくれる環境にあった。 なので、自分たちの選択が全て許されていると思ってしまった。 未だ経過観察期間であることに本人たちは気付いておらず、既に勝利を確信している。 それを見て自分の出世のネタにした前社長が、インド人の手に余す「会社」というおもちゃを与えてしまったことになる。 自分が出世した後の会社がどうなっても関係ないのだろう。 口では「自分が育てた会社だからかわいいし気になる」とか言うが、よくそんなでまかせをひょうひょうと口に出せるものだ。 最後まで結局面倒を見ない、骨を埋めないような人は何とでも言える。 

今まで書いたように、インド人を出世のネタにした日本人元社長や、気付いていても止めなかった、既にインド人を諦めているマネージャなど多くの要因があってこうなったわけだが。

自分が苦労しないで済む立場ならば何でも言える。 自分は安全なところにいて、もっともなことを喋っていればいいのだから。 逃げ切ってインドからわずか3年で帰任になり、部長になれたのだから本人は満足だろう。 その影で、インド子会社がどうなっても、もはや知ったことではないだろう。 本当の姿を知らないのだとしたら無能だから罪は軽いが、知っていて嘘をついているのならば罪の重い悪人だ。

そうした環境で、インド人が自由にできる環境が出来上がってしまった。

しかし、結局、自由にさせてもなるようにしかならないということ。
それに、たまに繰り出す大きな対策で一気に好転することはなく、地道に関わってゆくことなしに物事は好転しないように思える。