(続き)
そこでルシファーは、住民を宙に浮かせて兵士たちに良く見えるようにしてからバラバラに引き裂くことで敵を恐怖させ、撤退させるように意図することを選択します。戦局が長引けば長引くほどお互いの犠牲者が増えるばかりです。それよりは、1人の敵をバラバラに引き裂くことで敵を撤退させることができれば、その方が良いと考えました。手をこまねいていればゼウスの軍勢が容赦なくコアを破壊して復活不可能にまでしてしまいます。それよりは、1人の残虐な殺戮をして見せしめにすることで恐怖を与え、軍勢の撤退、停戦させることができればその方が良いと考えたのです。
単に一気にバラバラに引き裂くのみならず、じっくりと、痛がる方法で、少しづつ手足を引き抜きました。そうすると、ゼウス側の(残虐で何人もコアを破壊した酷い)兵士が悲鳴を上げて苦しみ出すのです。ぎゃああああああ!!! と大声で叫ぶと、それを見た他のゼウスの軍勢は驚き、恐れを抱き、動揺しました。悲鳴を続けている兵士をゼウスの軍勢の上に動かし、よく見える場所で見せしめにしたのです。そして、しばらく経ち、恐怖が高まり頃合いになった後、兵士を粉々に粉砕しました。そして、その体の破片をゼウスの軍勢の上に降らせたのです。恐怖でおののいている状況で、更に、仲間のバラバラになった体が空からそこら中に降ってきたものですから、ゼウスの軍勢は大混乱に陥ります。
そして、それに追い打ちをかけるように、ルシファーが叫びました。「去れ! お前たちもバラバラにされたいか! されたくないなら、ここからすぐに立ち去るがよい!!」そうすると、もはやパニックに陥っていて統制を失っていたゼウスの軍隊は蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出したのです。
その工作はうまく働きました。何人ものコアの犠牲者が生まれるような状況で、たった1人の残虐な殺戮の見せしめによりゼウスの軍勢がおののき、動きを止め、逃げ出したのです。それは、人数を考えれば、たった1人の犠牲で大勢が守られたのです。
この手法によって犠牲が減らせると学んだルシファーはその後、(今の)世間で悪魔としてイメージされるような恐怖のマントをまとうようになります。これが、ルシファーが悪魔だと言われるようになった所以です。恐怖によって戦争を抑えようとした。恐怖で犠牲者を減らそうとした。恐怖で戦争を終わらせようとした。それがルシファーでした。
ルシファーの気持ちとしてはこんな戦いは意味がないと思っておりましたが、ゼウスはというと農民兵がバラバラにされたことを聞いて怒り狂い、ゼウスの周囲の天使たちもルシファーは闇堕ちして堕天使になってしまったのだと噂し始めます。ルシファーについてきた天使たちはそれでもルシファーを慕っておりましたが、ルシファーの気持ちを本当に正しく理解していたかどうかはよくわかりません。ある程度は理解していたと思いますが、当時は皆、冷静だったルシファーを除いては敵との戦いで気持ちは精一杯だったと言えるでしょう。
実際には、ルシファーが空中に浮かべてバラバラにした農民兵は1つの戦いにおいてせいぜい1人か数人と言ったくらいで、それも、きちんと相手を見ており、自らの軍勢の兵士のコアを破壊して復活不可能にまでするような残虐な兵士のみを選んで空中に浮かべ、見せしめにバラバラにするということをしました。被害としてはゼウスの軍勢の方がよほど少なかったのです。ルシファーは、恐怖を与えることで敵を撤退させようとして、それはある程度は成功したのです。最初こそそうしましたが、やがて、そのことが知られるようになると警告を与えるだけでゼウスの軍勢は逃げるようになったのです。その後、戦いがあっても、農民兵が進軍するとすぐにルシファーがテレポーテーションし、今で言うところの悪魔サタンのような恐ろしい格好をして農民兵を戦わずして退却させていたのです。「バラバラにしてやるぞ」と脅せば農民兵は退却するだろうと考えたのです。これはすぐに効果が現れ、農民兵の戦いはやがてなくなってゆきます。
一方で、ルシファーは悪魔として知られるようになります。ルシファーにサタンのイメージが熟成されつつありました。
実際のところ、ルシファーはそれでもまだ、遊んでいただけでした。やがて遊びも終わって、元の平和な日々に戻るだろうと楽観視していたのです。しかし、そう簡単にはいきませんでした。
(続きます)