時々、世界が同じ考えで統一されれば平和になる、みたいなお話を聞くことがあります。宗教や思想、はたまた自称ライトワーカーの形而上学(メタフィジックス)などで統一された見解に基づけば世界は思想的に統一される、という考えです。
実のところ、その種の統一理論はこの宇宙の「理解」を妨げますので持続せずに必ず分裂します。この宇宙の根本原理は「理解」であり、それは元々ワンネスだった「自分自身を知る」ということでありますから、何やら1つの思想や理論がたとえ究極と自称したとしても、この「理解」という単純な宇宙の原理と比べてしまうと根本とは言えないものなのです。
この宇宙の根本原理は理解そのものであり、それは、宇宙が未だに自分自身を知らない、と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、この宇宙全体の究極的なワンネスは無限でありますので、無限ということは永遠に拡大する・・・ というと語弊がありますが、無限であれば拡大も縮小もしないのが原則ではありますけど、無限故に、この時間軸に制限されている人間の意識からしたら、今の自分自身たる宇宙の理解からすれば未来の宇宙の理解というのは、宇宙はざっくばらんに言えば無限そのものとはいえ、人間の時間軸からすると、宇宙が成長している、という見方もできるのです。
ですから、今の宇宙の理解よりも未来の宇宙の理解の方が進んでいる、というのは、ざっくばらんに言えば、そう表現することものできるのです。
その前提に立つと、同質の考え方で統一される、というのは長続きせず、思想的なフラストレーションを生み、必ず新たな考え、思想が生まれ、分裂します。
ですから、社会というのは、ワンネスが自分自身を知るために分裂した、という、そのミクロな根本を踏まえてマクロなこの世界を設計する方が良いのです。
集団にせよ国にせよ、お互いを知るために分裂した、ということです。それぞれは別の存在にあたかもなったかのようでいて、別々の存在として生きているわけです。元はワンネスであったわけですけど別々になることでお互いを知ろうとしたわけですから、それと同じように、別々の集団や国はその中では同質な傾向がある一方で、他を外から見て知る、という役割がお互いにあるのです。
ですから、世界の全ての国や思想を1つで統一すれば世界は平和になる、というのは、元々のワンネスたる状態から分裂して宇宙が出来たという動きに反しているのであり、その試みは成功しないでしょう。もっと何十億年も何百億年も経って宇宙が再度ワンネスに戻る時が来たらそのような流れもあるかもしれませんが、当分はそういうことはないでしょう。
そのような前提に立てば、我々人間の側がやるべきことは、そもそも違う存在であるという前提に立ちつつお互いに理解する、という姿勢なわけです。ワンネスたる状態から分かれていったことを踏まえればどちらも「自分」ということであり、自分たる相手を外側から知るために分かれて存在しているわけです。
そして、思想もお互いに自由にすべきであると言えます。多種多様な考え方の中にはおかしなものや不思議なものも含まれるのですが、そのようなものも含めて宇宙は多様性に満ちています。お互いに見合うことで変な思想は淘汰され、正しい理解という方向に向かってゆきます。
ここで大切なのは、誰かが作った正しい理解を学んで理解すれば良いというお話ではなく、各自が自分の環境で自分自身のみならず隣人や他の国を理解するという姿勢なわけです。たしかに勉強も大切ですけど、それよりも、各自の状況において常に理解するという姿勢が大切なわけで、それは世界統一思想による平和とか、そういうお話でもないわけです。
ただ単に、この宇宙が出来た根本原理を理解して、宇宙が出来た理由は「自分自身への理解を得るため」だと理解したならば自ずと争いも止むでしょう。それは根本原理であるが故に各自の環境や国々においては自身の状態を踏まえて各自で考えて良いのであり、その時に、他者への理解ということを前提にするのであればそうそう変なことにはならないわけで、変であったとしても他者との関わりの中で修正されます。
むしろ、修正できないような「統一理論」で世界が統一された時の方が危険で、たとえば形而上学みたいなもので統一されたら世界の思想的な多様性が失われ、そのようなことは宇宙の法則に反していますので持続可能ではないわけです。カルトなど一部がそのような不思議な理論を持ち出すのは全体から見ると多様性を生み出すので宇宙の法則から言っても好ましいですが、その1つの思想で統一するというのは宇宙の法則に反しているわけです。極端な思想はカルトなど一部の人が考えているからこそ宇宙的にも好ましいのであり、一部の思想が広まるとそれは宇宙の法則に反することになり壊滅的な結果をもたらすことがあります。
思想を統一するのではなく、お互いに探求しているということを踏まえ、ほどほどの距離を保ちつつも可能な範囲で理解を相互に進める、という、割と普通な道徳的なお話が宇宙の法則でもあるわけです。こんな簡単なお話で良いのならば、それが当たり前になれば世界に平和が訪れます。いわば平和とはそのくらい簡単なお話なのです。
そして、平和を崩すのはメタフィジックスなど極端な思想で二元論を元にした人たちであり、悪を正義が成敗するという力の論理で世界を統一しようとするとそれは必ず失敗します。何故ならそれは「理解」という宇宙の法則に反しているからです。