これまた夢で見たお話。本当のことかはわかりません。
幾つかの人生を転生して、ある時、物理数学者としてフランスかどこかの王立のような名誉のあるアカデミーに所属していました。若い頃にとある理論を発表し、それについて研究を進め、年寄りになる頃には学校でその理論が教科書で教えられるようになってやがてはその理論は当たり前のようになってゆきました。
その人生では割と著名な学者で若い頃に作った理論の上に更なる理論を積み重ねて行ったものです。
長らくその世界にいると権威のようになって、威厳も増えて、しかしながら、そのような権威ある立場ですからチヤホヤされて自尊心が拡大し、細かいことでいちいち怒りっぽくなってしまったように思います。自分だけが理解して他人が理解できないという状態が何十年も続いて、やがてそれが教科書に載るようになったものですから、他人をどこか小馬鹿にしていたのですね。これは反省点です。
その反省をするためなのかあるいは反作用が働いたのか、次の人生でも学者になろうとしましたがうまくいかず、アカデミーには入れず、教員として生計を立てましたがなかなか家計は苦しかったように思います。
この時はあまり心配せずに次の人生に生まれてしまったために金銭面で苦労したことを覚えています。
そうして金銭で苦労しましたのでそのまた次の人生は金銭に苦労しないようにパリのフランス革命革命前夜のパリの商人の家に生まれました。商売は割と順調で、予定通り、金銭には苦労しない生活をしていました。
しかし、次第に景気が悪くなってきて、人々が食べるものにまで困るようになります。
私は商人でもありましたし、小さなバーと雑貨店を兼ねているようなお店も運営していましたからパリ郊外からの商人との取引がありました。
ある日、私は他の行商人の取締役たちを呼んで会議をしました。
品物がどんどん高くなる。それはパリに品物を卸している大手の業者が値段を吊り上げているからだ。しかし、我々も厳しい。このまま仕入れ価格が上がって行って小売価格がそのままでは我々は破産してしまう。よって、皆で価格を調整し、主要な品物を一斉に引き上げることにしよう。そして、それは同意されました。
ここに、フランス革命前夜の商売のカルテルが出来上がったのです。
もともと少しずつ価格は上がっていましたが、カルテルによって一気に価格を引き上げたのです。これで小売業の収支は持ち直しました。しかし、住民が困ることになりました。
ある日、パンや小物を買いに来たお得意さんの住民が一気に値段が上がったのを見て「どうしてこんなに高いのか?」と苦情を言いました。
それに対して、答えました。
「仕入れ価格が上がっているんだ。他のお店に行ってみろ。どこだって高くなっているぞ。先週はこれで○○で仕入れた。しかし今週は○○になっている。今週の仕入れ値は少し前の売価よりも高いんだ。それに手数料を載せて売ったらそのくらいになる。仕方がないだろ」
お得意さんが「それじゃ、その仕入れ値で売ってくれ」というものですから、「だめだ。手数料がなければ儲けが出なくて、次の仕入れができなくなる。次の仕入れはもっと高くなるだろう。品物が手に入らなくなったらお前さんだって買えなくて困るだろ。仕方がないんだ。卸業者が高く値段を釣り上げているのだかな・・・」
それは真実ではありましたが、カルテルを結んで価格を安定させていたのもまた、事実でした。
そんなことを繰り返していた結果、かなり不満が溜まったのでしょう。やがて、「住民が街に集まっているぞ!」「王を倒そう!」という声がそこかしこから聞こえてくるようになります。
私は「王を倒すなんて、そんなことできないだろ」と思っていましたから特にデモ隊には参加せずにお店を開いていましたが、やがて王が倒されたと聞いてびっくりしました。
当時は単にびっくりしただけでしたが、今から思えば、そんな歴史的瞬間に立ち会えたのであればもっと歩き回って雰囲気を見ておけば良かったとちょっと後悔しています(苦笑)
とは言いましても、レ・ミゼラブルに出るようなあんな熱い感じでもなくて、もっと怒りに震えた感じ、不満が爆発する感じですので、レ・ミゼラブルは美化しすぎかな、という気が致します。同時代に生きた感覚としてそんな気が致します。
そうして王は倒され、ある程度、物価も戻りました。
しかし、多少は良くなりましたが、根本的には変わりません。いつの世も、庶民は権力者に利用されるものですね。王を倒したい人がいて、庶民は動かされただけだったのだと思います。